『シンギュラリティはより近く 人類がAIと融合するとき』 レイ・カーツワイル 著

『心』 - 人間性を磨く

またまた久しぶりの更新になってしまいました。なんともう6月も終わり、1年の半分も終了するという時期になってしまいました。勢いよく始めたこちらのリーダーシップノートの更新も、年の半ばに差し掛かるところで、見事にペースダウンする、という典型的なダメ曲線を描いています。それはすなわち、自分自身へのふりかえり、学びが頓挫している表れでもあるかと思います。気を引き締めなおして、年の後半、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

 

そこで、今日はこれから世界はいったいどうなっていくのか、そんな気付きを与えてくれる書籍を紹介したいと思います。レイ・カーツワイルの『シンギュラリティはより近く 人類がAIと融合するとき』です。VUCAな今にあって、リーダーにますます必要とされる能力は「構想力」であり、くるであろう世界をすこしでも鮮明にイメージする中でバックキャストで今やるべきことを明確にすることを助けになればいいなと思います。

 

レイ・カーツワイルはご存じの方も多いと思いますが、米国のAI研究家、未来研究家で、「シンギュラリティ」の概念を提唱した方です。この書籍では、想定以上の早さで進化しているAIと人類が、これからどのように共生していくべきなのか、リスクも含めて、論じています。哲学的で、根源的な問いも多く問いかけられていて、非常に重厚な一冊です。

 

詳細はぜひご一読いただくとして、参考になるこれからの世界について、いくつかご紹介します。主には、これからAIと人間は切っても切れなくなるということを論じています。

 

AIがその能力を高め、情報へのアクセスが容易になるにつれて、これらの能力と、人間が本来持つ生物学的知能とがこれまでにないほど密に結びつく。いつの日かナノテクノロジーによって、クラウド上のバーチャルの神経細胞(ニューロン)層と人間の脳が接続され、脳が直接的に拡張されるまでに至るだろう。こうして人間はAIと融合して、人間が本来もつ力の数百万倍の計算能力を有するようになる。これによって、人間の知能と意識は想像もつかないほど大きく拡張される。これが「シンギュラリティ」によって起こることだ。

 

これからの10年で人々は、まるで人間のように思えるAIとかかわるようになり、今のスマートフォンが日常生活に与えるのと同じくらいの影響を単純なブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI=脳とコンピュータを接続すること)が与えることになるだろう。バイオテクノロジー分野のデジタル革命は、病気を治療し、健康寿命を延ばす。だが、それと同時に、多くの労働者が経済的混乱による痛みを味わい、この新たな可能性について偶発的あるいは意図的な乱用が起きる危険性に私たち全員が直面するはずだ。2030年代には、自己改良型AIと成熟したナノテクノロジーによって、かつてないほど人間と機械が結合することになり、それによって未来の可能性と危険がともに高まる。これらの進歩がもたらす科学的、倫理的、社会的、政治的課題に対処することができれば、2045年までに地球上の生命やよい方向に大きく変容するだろう。

 

人類は今、第四のエポックにいて、テクノロジーはすでに、一部の課題について私たちの理解を超えた結果を生み出すようになっている。AIはまだチューリングテストに合格できていないが、その進歩は急加速している。合格するのは2029年だと私は予想しているが、そのときに私たちは第五のエポックに入るのだ。

 

2030年代で鍵となる達成レベルは、六層構造となっている私たちの大脳新皮質の表面に近い部分とクラウドコンピュータを接続し、直接に私たちの思考を拡張することだろう。これによって、AIは人間の競争相手ではなく、人間を拡張するものになるのだ。これが実現するときまでに、私たちの脳に占める非生物的な部分は、生物的部分よりも何千倍も高い認知能力を与えてくれているはずだ。

 

たとえ前提が大きく変わったとしても、予測の本質的なメッセージは変わらない、ということだ。つまり、今から約20年以内に、人間が大切に考えている脳の機能すべてをコンピュータはシミュレートできるようになるだろう。それは今から100年後に私たちのひ孫の世代が答えを見つけなければならない話ではない。2020年代になって、人間の寿命を延長する試みが加速しているので、今、あなたが80歳以下の健康体ならば、あなたが生きているうちに実現するかもしれない。視点を変えてみよう。今日生まれた子供は、小中学生である間にAIがチューリングテストに合格するのを見て、大学生になるときには能の模倣がかなり進んでいるだろう。

 

「AIは、人間を拡張する手段となり、一体化する。」

衝撃的な予測です。「人間にできること」「AIにはできないこと」そんなレベルの議論ではない。

 

思考を文字にするテクノロジーは社会を変えてしまうほど斬新だ。脳波を言語に変換する技術の研究は続けられている。
最終的にBCIは、ナノスケールの電極を、血流を通じて脳に入れるなどの非侵襲的な方法が基本となるだろう。
大脳新皮質をクラウドに接続した人間が経験する芸術について考えるときに、それはCGI効果に優れているとか、味やにおいなど感じられるといったレベルではなく、脳が経験を処理するプロセスが劇的に変わる新しい可能性がある。たとえば、現在の俳優は言葉と外面の肉体的表現で考えていることを伝えるだけだが、BCIの芸術では最終的に、登場人物の整理されていない言語以前の生の思考が、言葉では表現できない美しさや複雑さが、直接に私たちの脳に入ってくるかもしれない。それらはBCIが可能にする文化的な深みなのだ。
これは共創造のプロセスとなるだろう。より深い洞察力を解放するために私たちは脳を進化させ、未来の脳を探検するために、今までの枠を超えた新しいアイデアを生むべくその洞察力を使うのだ。やがては、私たち自身のソースコードにアクセスし、AIを使ってそれを再設計するようになるだろう。このテクノロジーは人間が作る超知能AIと人間が融合することを可能にし、人間は自分たちを本質的に作り直すのだ。私たちの脳は頭蓋骨という筐体から解放され、回路基板によって生物的組織よりも数百万倍も速く情報を処理できるようになるので、知能は指数関数的に成長し、今の数百万倍にまで拡張する。これが私の定義するシンギュラリティの中核なのだ。

 

そうなると、リーダー、いやそれ以上に、問いかけなくてはいけないのは、

 

私は誰になる?

 

このような根源的な問いを考え、自分なりの答えを示し、感情に働きかけ、共感を得て、人の行動を変容すること。リーダーに求められるのは、ますますEQリーダーシップなのではないか。そんなことを考えさせてくれます。

 

その他にも、衝撃的で、深い内容だと思います。ゆっくりとぜひかみしめながら読んで、考えて頂きたい一冊です。

タイトルとURLをコピーしました