『好奇心脳』 加藤 俊徳 著

『体』 - 健全な身体と精神を保つ

前回、若々しい脳を維持するためには、前頭葉を生き生きと保つことが大切。そのために、前頭葉を鍛え続ける5か条、を紹介しました。

このような思考をするということ自体、自身の年齢や、脳の老化に対して「コワい」という意識を持っているということの表れなのですが、当然いろいろな考え方を知りたい、と思ってしまいます。

そこで、今日は、加藤 俊徳さんの、『好奇心脳』 という書籍を紹介します。

本のタイトルになっていることで明らかなように、健全な脳を保つためには、「好奇心を持ち続けることが大切」 と主張されています。

本書の結論としては、以下になります。

  1. 好奇心脳で、「記憶力」が向上する
  2. 好奇心脳で、「仕事効率」が良くなる
  3. 好奇心脳で、「コミュニケーション」にストレスがなくなる
  4. 好奇心脳で、「毎日」が面白くなる
  5. 好奇心脳で、「自分の成長」が楽しみにな

では、もう少し、掘り下げて紹介してまいります。

好奇心とは何か?

「好奇心」とは文字どおり、「珍しいものや、今まで出会ったことのない人や物に刺激を受けて、興味を持ち、探求しようとする心」です。なぜ、中高年の多くが「好奇心の欠如」状態に陥っているのか。それは、その世代の人たちが、知らず知らずのうちに「自分の感情を閉じ込めてきた」からです。
「好奇心」は、「明らかな理由がない場合でも、未知のものを探求したいという人間や動物の本質的な欲求」と捉えられ、19世紀後半からすでに科学的研究が行われてきました。その過程で、好奇心は人間や動物の行動に強く影響するものと認識され、人にとって、新奇性と驚きは、好奇心を呼び起こし、「ノルアドレナリン作動性ニューロン」を刺激すると報告されています。ノルアドレナリン作動性ニューロンは脳幹に存在し、最近の研究では、海馬内から「ノルアドレナリン」と「ドーパミン」という神経伝達部資質を放出し、それら神経伝達物質の放出が記憶力を高めることが証明されています。さらに鮮明で長期記憶に分類される「エピソード記憶」にも、これらの神経回路が関与していると示唆されています。
ドーパミンには、記憶力を高めるほか、やる気を出させる働きもあり、認知機能が活性化することが知られています。また、同じ神経伝達物質で、不安やストレスを軽減する「セロトニン」と共感力を高める「オキシトシン」はともに、「幸せホルモン」とも呼ばれ、多幸感をもたらします。
これらの神経伝達物質の分泌が高まることで、やる気や多幸感が増幅され、ワクワクやドキドキが生まれて、さらなる好奇心が芽生えます。好奇心の好循環が実現するのです。こうして持続的に好奇心を持つことで、通常であれば、ストレスと感じない、マイナスのことも見方が変わってプラスに受け止められるなど、人生がどんどん楽しくなっていきます

では、好奇心を持てる状態に、脳を開放するにはどうしたらよいか?

「右脳感情」は「他人感情」、「左脳感情」は「自己感情」と言い換えると、わかりやすいかもしれません。
脳科学的には、左脳感情が目覚める45歳前後が、右脳感情から左脳感情へ切替え、自分の「好奇心」を見つめなおすベストタイミングです。他人への付帯に重きを置いた感情から、もう一度、本来の自分の気持ちに正直になるこのタイミングを逃すことは、定年前の約20年を無駄に過ごしてしまうことに他なりません。
左脳感情から生まれる「好奇心」は、強力かつサステナブルで、持続性があります。この自分自身の「好奇心」でつかんだ記憶は、いくつになっても忘れることはありません。
失われた好奇心を取り戻すには、好奇心いっぱいだった子供の頃に回帰すればいい。もともと「好奇心」がなかったという人も、新たなタネをみつけて育てればいいのです。たったこれだけで、毎日が楽しくなり、記憶力も高まって、脳は成長し、最高の生き方になるー。
年齢制限もありません。脳はいくつになっても成長する器官ですから、「もう歳だから」とあきらめる必要はないのです。

仕事、家庭、と責任も大きくなり、自分以外の要素で自分を閉じ込めがちですが、だからこそ自分に正直になることが大切である、と。

脳の成長のカギを握るのは、胎児のときに獲得した「神経細胞」です。そして、私たちの脳の中には、生まれたときから同じ状態で、使われずに眠ったままの神経細胞が山ほど残されています。これから成長する可能性のある“お宝”ともいえるもので、私はこれを「潜在能力細胞」と呼んでいます。
「潜在能力細胞」は100歳を過ぎてもなお脳内に存在します。胎児のときに母親から受け継いだ細胞が、その間ずっと目覚める時を待ち続けているのです。そして、恐ろしいことに、新しい刺激や経験がなければ、これらの細胞は目覚めないまま放置され、葬られてしまうのです。(もうお気づきかもしれませんが、これらの細胞を目覚めさせる大きな刺激や経験を与えてくれるものが「好奇心」なのです。)

私のような年齢になると、脳の退化を恐れるようになっているのですが、そうではなく、脳は成長を続けることができると。

脳には一般的に50代を過ぎてから成長のピークを迎える部分もあります。それが脳の前方にある「超前頭野」と呼ばれる部分で、「実行力」や「判断力」を司っています。この「超前頭野」と、30代でピークを迎え、記憶や理解に関係する「超側頭野」、さらに、40代でピークを迎え、五感で得た情報を元に分析や理解をする「超頭頂野」の3つを合わせた部分を、私は「超脳野(スーパーブレインエリア)」と名付けています。
社会の中で多くの経験を積み重ねてきた40・50代は本来、「超頭頂野」や「超前頭野」が活発に働くことによって、難しい話や込み入った事情を理解し、適切な判断ができるということ。この世代こそ、さまざまな経験や知識に裏打ちされた「思考力」や「理解力」を備えた個性が、もっとも輝く“黄金世代”なのです。
脳科学的観点から言うと、40・50代の脳は、「加齢による老化の傾向がみられる反面、個性を発揮できる可能性を秘めた脳」ということができます。
45歳を過ぎて「ますます元気に輝く人」とは、「左脳感情から生まれる『好奇心』を大切に育て、次々と新しい刺激や経験を求めた結果、脳が成長を続ける人」であり、「一気に老化してしまう人」とは、「右脳(他人)感情に付帯し続けた結果、左脳感情が未発達のまま『好奇心』を失い、脳は成長を止めて徐々に衰え、人生を終えようとしている人」なのです。
今の国際的見地としては、「できるだけ長く脳を成長させ続け、高い認知機能を維持することが、認知症予防のために重要」とされています。

結晶性知能は40代、50代で活性化されてきて、若い時と少し違う“脳力”を獲得しているのだというのは、前回の指摘の通りです。

では、どうやって好奇心を活性化させておけるのか?(その問い自体が、ナンセンスの様にも感じますが。。。)

「好奇心のタネ」を認識できるかどうかは、ひとえに私たち自身にかかっています。自分の中に「好奇心のタネ」が眠っているのか、それはどんなタネなのか、自分自身で見つける努力が必要です。そのために大切なのが、「自己認知」です。「自己認知」とは、自分自身で、自分が何者であるのか、どんな価値観を持っているのかなどを把握することです。そして、自己認知を深めるには、これまで抑えつけてきた「左脳(自己)感情」を開放しなければなりません。
「慣れ」に任せた日々を送っていると、新奇性も驚きもなく、自動化された脳が勝手に動くだけになってしまいます。そのため、「好奇心」が芽生えることもなく、脳に新たな刺激を与えることもできません。すると当然のことながら、使っていない脳エリア=脳の枝ぶりを伸ばすことができず、結果として脳は成長することができません。まずは、毎日の生活の中から「慣れ」を排除していきましょう。「いつも同じことをしているなあ」と感じることがあれば(思い当たる方は少なくないはずです)、少し違った方法でやってみる、今まで経験したことのない新しいことに挑戦してみるー。これが「脱・自動化」。その結果が新たな「好奇心」の芽生え、脳の成長につながっていくのです。
「好奇心」は、衰えていく脳をリブートしてくれる唯一無二のものといっても過言ではありません。そして、私は「好奇心」をエネルギーに成長を続ける脳を「好奇心脳」と呼んでいます。

ちょっと違った行動をしてみる、と。日々の少しの意識と行動の積み重ねが、新鮮な好奇心脳を維持できる秘訣なのかもしれません。

そして。。。

睡眠時間が短いグループの脳内には、認知症の引き金になるといわれている「アミロイドβ」というアミノ酸化からできる物質が多く溜まっていたのです。また、睡眠時間が6時間以下の人の脳は、それ以上寝ている人と比べて、アミロイドβの沈着率が圧倒的に高いこともわかりました。
最先端研究では、私たちが寝ている間にも脳が仕事をしていることがわかってきています。そのひとつが、「脳の老廃物であるアミロイドβを脳の外側にある脳脊髄液の中に排泄する」という仕事です。脳が一生懸命活動すると、老廃物が出てきます。起きている間も、それを排泄してはいるのですが、寝ている間の方がその働きがより活発になるのです。私たちの体は、排尿や排便で老廃物を排泄し、“解毒”しています。寝るという行為は、脳にとっては老廃物を解毒するプロセスです。
セロトニンは「覚醒物質」に分類されますが、「抑制物質」に変化することができ、両者のバランスを取りつつ、脳をコントロールしています。また、同じく脳から分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」の原料にもなり、睡眠にとっても、非常に大きな働きをしています。(日中、十分にセロトニンが分泌されないと、睡眠時間を確保することが難しくなるからです。)

やっぱり睡眠なのですね。そして良質な睡眠をとるためには、十分に身体を動かすこと。

前回ご紹介した前頭葉を活性化させる5か条を行っていれば、いきいきとした脳を保て、そして好奇心も刺激し続けることができる。ひいては、健全な「心技体」を保つことができる。

優れたリーダーシップを身に着けるためには、当然、高い知能も必要なのですが、それを最大化できるような、脳の状態を確保する、それには運動が必要で、食事が必要で、人と交わることが大切で。。。。。 当たり前の生活習慣を保つこと。これが大切なのですね。

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