『本多静六のようになりたいなら、その秘訣を公開しよう』 本多 静六 著

『体』 - 健全な身体と精神を保つ

前回は、志の大切や、人をやる気にさせて導く『心』の部分について、グロービス創設者の堀さんの言葉を紹介しました。今回は少し趣を変えて、本多静六さんの、『本多静六のようになりたいなら、その秘訣を公開しよう』 をご紹介します。

 

本多静六さんは、日本初の林学博士で、日比谷公園の設計や国立公園の設置に尽力しました。また、株式投資等を通じて巨万の富を築き、「日本一の幸福者」とも称された人です。その財産の多くを社会貢献に使い、質素な生活を貫いたことでも知られています。

 

この書籍は、仕事への向き合い方や、生き方、日々の習慣などが紹介されており、自己実現や幸福を追求する秘訣が述べられています。『心』を磨く秘訣に通じるところも多くあり、今回はいくつか印象に残った考え方を共有します。

 

 

まず、人間性を形づくる「品性」について、このような持論を述べています。

高尚な品性とは、

  • 良心が健全で、責任感が強く、正直で公平廉潔である事
  • 誠実で親切、仁愛に富むこと
  • 意志が強固で、あらゆる誘惑に打ち勝ち、正義を支持できること
  • 礼儀正しく、野卑でないこと

 

当たり前ですが、明確に品性を定義しており、リーダーとして人のお手本になるべく、身に着けるべき素養として、『心』の大きな要素になると思います。

 

 

そして、日ごろの立ち居振る舞いについても、リーダーのあるべき姿として参考になります。

『顔は心の鏡とも言うが、心に喜びがあり、感謝の念があると、自然とニコニコした朗らかな表情になり、人相も良くなって、引き立てられて成功の元になる。それならば、いつも快活な心を持ち、朗らかな顔を持つに越したことはない。それから、決まりが悪いとか、億劫に思うことも禁物である。子供のような無邪気さで、知らないことや迷うことは、何でもサッサと人に問いかけるのが良い。昔から、「問うは一時の恥、知らざるは一生の恥」というが、知らないことは人に聞いて安心するのが、早く快活になる方法である。』
どんな仕事でも、いやそうな顔をして億劫そうに仕事をするなどは、禁物である。特に知らないことやわからないことは、ごまかさずに人に聞いたり、調べたりして、これなら確かだと自信を持てるくらいに真摯に取り組むことが肝要である。』

 

 

EQリーダーシップでもふれていましたが、トップの立ち居振る舞い、特にネガティブな雰囲気というものは、組織にあっという間に伝染するものです。どんな時も、明るい表情で、物事に取り組む、人に接する。

 

かわいげ

 

素直さ、とも言えますが、わからないことを恥じず、新しいことを吸収する好奇心が大切であることも、共通して出てくる素養になるかと思います。その姿勢が、謙虚に学びを請う姿勢として、相手にも好感を持ってうけいれられるのではないでしょうか。逆に、”何でも知っている”感をだす、特にリーダーだったりすると、何も言う気がなくなったりしたことありませんか。じゃあ、自分でやったら、みたいな。でも、私もかわいげの大切さに気付いたのは、年取ってからです。。。

 

『「うぬぼれ」は目立たぬよう、笑われないよう、知られないように、ジワジワと「小出し」にするべきである。つまり、目的を達成するまでは、うぬぼれを心ひそかに継続して持っていて、専心努力するべきである。そうしてコツコツ努力を続けていくうちに、実力がついてきて、うぬぼれが本当の自信になり、知らず知らずのうちに本当の手腕、力量、人格が備わってくる。

 

こうした謙虚な姿勢は大切。一方で、リーダーとしては卑屈なまでの謙虚さは必要ない。なぜならば、組織の方向性を決める重要な決断を下す立場の人間が、あまりに頼りない態度では、これも組織に不安を巻き起こす。この謙虚さと自信のバランス加減は、教えられるものではないですが、修羅場をくぐった経験からの蓄積と、人間性を高め続ける旅とで、身についてくるものなのだと思います。

 

 

そして、私の場合は、取り組んでいるタスクを前に進めたくて、とかくスピード感を求めがちなのですが、もう少し俯瞰で取り組むことの必要性も、説いています。

 

いい仕事の仕方の例として、先をあまり急がないことも、成功するためには必要である。行く手ばかりを見て、あまりに無我夢中に先を急ぐと、辺りの美しい景色も目に入らなければ、足下に咲き乱れた可憐な花にも気付かない。人生はきわめて長い。急いでも急いでも急ぎきれない旅路であるから、その時々の行程を楽しみつつ、勉強道楽、職業道楽をしつつ、ゆるゆる途中の眺めを鑑賞していくのがよい』

 

ゆとり、でしょうか。急ぎながらも、深呼吸を忘れず、広い視野を忘れないこと。

 

そして、こんなことも言っています。

 

『特に、誰にでも使われる雅量がなければ、人の上にたつことはできない。誰に使われるくらいの人は、「何でもできる」有為の人物である

 

「器の大きさ」、ですね。組織の大きさは、リーダーの器の大きさによるということも、よく言われますし、皆さん自身も懐の深いリーダーと仕事をするときに、自分の視野の狭さなどを感じることがあるのではないでしょうか。

 

 

このように、本多さんが成功してきた秘訣、普段の行動やふるまいについて、参考になるものが多いのですが、最後に『心』だけでなく、『体』も大切であることも述べています。

 

 

中年期はもとより、老年期に入っても、1日に2時間以上は必ず歩いた。よく歩くと、よく眠れる。これも大きな収穫である。よく歩くこととよく眠ることは、老衰予防、そして健康長寿の手短な秘訣に思う』

 

リーダーが健全な肉体と精神を保つこと、つまり、『体』を高めること、本当に大切だと思います。自分に対する肉体的、精神的余裕がなければ、周囲に対してそのような振る舞い、器の大きさを示すことができるわけない。年齢を重ねてくると、『技』よりも、『心』と『体』を整える大切さを実感しています。

 

年齢を重ねてきたからこそ、出てくる人生の年輪かもしれませんが、意識をすることで、振る舞いは変われるはずです。まずは、認識すること、EQでいう、「自己認識」、そこからの「自己管理」。俯瞰の視点で、自分の思考や行動を、鳥の目で眺める意識を持つことも大切ですね。

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