仮説思考:網羅から「集中と深掘り」へ

『技』 - スキルを磨く

前回までの2回では、リーダーにとっての「問題解決力」の重要性、そしてAIをパートナーにできる今だからこそ基本の型(=技)を身につける意義について書きました。


今回はその中核のひとつ、「仮説思考」に焦点を当てます。

 

 

「仮説思考」を自分の言葉で言えますか?

正直に言えば、私は文系出身で、「仮説思考」という語感に最初はピンと来ませんでした。

「仮の問題設定?」「仮の回答案?」——何か“仮”の曖昧さが残る感じです。

ただ、学びと実践を重ね、他のリーダーの思考にも触れるなかで、書籍に大きく助けられました。

 

まずは、内田和成さんの『仮説思考』から。

仮説思考とは、物事を答えから考えることである”


” 仮説思考を使えば、手元にあるわずかな情報だけで、最初にストーリーの全体構成をつくることができる”

 

『仮説思考』 内田 和成 著

 

出発点は「仮の答え」から。。。こんな考え方なのだ、ということを気づかせてくれました。

 

 

私の転換点:「網羅」から「So What?」を越えて

当時の私は、MECEやロジックツリーを丁寧に展開し、ノートに手書きでイシューツリーを広げては、モレや論理の整合を何度も検証していました。

ところが、導かれる解に面白さや新鮮さが乏しい。どこか「So What?」感が残る。

 

このとき内田さんの言葉に出会い、気づきました。

 

” 重要なのは、最初に絞り込むこと。問題を絞り込むと、幅広いテーマでもかなりコンパクトに扱うことができる。仮説を使うということは、不要な問題や役に立たない解決策を消去するプロセスなのである”

『仮説思考』 内田 和成 著

——全体を俯瞰したうえで、「スジの良い論点」を選び、深く解く。

必要なのは、網羅の厳密さではなく、集中と深掘りでした。

 

 

現場の臨場感で腹落ちさせてくれた一冊

自分のやり方をアップデートしていく中で、決定的に腑に落ちたのが、山本真司さんの『40歳からの仕事術』です。

 

以下、臨場感が伝わる長めの原文を引用します。

仮説思考のアプローチは、当たりをつけて、ここだという場所だけを深く掘り下げるんだ。”


“40代からは、「自分で考える」ことを得意技にするべきだ。”


“重要なのは、現場をイメージし、そのイメージを自在に操ること。40代ならイメージ生成のための材料が豊富で、イメージ操作のための新鮮な刺激となる深い教養もある。このミックスが一番理想的な年代なんだ。”

『40歳からの仕事術』 山本 真司 著

 

さらに、プロジェクトの場面を切り取ったこのくだりは、仮説思考の“進め方”の教科書として今も強く記憶に残っています。

 

僕が朝倉だったら、こういう説明をするな。

 

「我々のプロジェクトには時間という資源の制約がある。メンバーの体力にも限りがある。「頭から考える」アプローチでは、この期間では一部を眺められても結論は出せない。制約は所与のものとして、まずはこの状況で効果・効率が最大限上がるように精一杯実践したい。それでだめなら、私が責任を持って対処する。

 

私の提案は、「尻から考えよう」ということだ。暫定的な結論を考えるための材料は揃った。とりあえず、これ以上の情報収集はやめよう。手元にある情報から、何が結論なのか、僕らの頭で考えようじゃないか。我々が得たいのは、どうしたら東部電気販売が立ち直るか、という提言だ。そのためには現在の窮状を招いた原因をあぶりださなければならない。因果関係の推論が大きな仕事だ。現状をいくつかの塊に分けて、因果関係を検討するんだ。ここはあくまで仮説だ。しっかりした分析で検証しなければならないが、検証されれば我々の正式な提言になる。反証されれば次の仮説を作り、検証する。検証を試みる仮説は、我々にとって最大の論点だ。突っ込んだ分析をしよう。大事な所を深く掘り下げられるという意味でも、通り一遍のアプローチより優れている。

 

早速、課題の整理と原因を推定する思考作業に入ってもらいたい。課題を細分化して、各々原因を探ってくれ。因果関係を明確にするんだ。明日の夕方、各チームがプレゼンするように。”

『40歳からの仕事術』 山本 真司 著

 

 

基本の型は血肉になった。ではAI時代にどう磨くか

私はこの「基本の型」を、考え・実践・修正・アップグレードを重ねて身につけてきました。今もリーダーとして不可欠の素養だと確信しています。

 

一方で、生成AIはこの一連のエクササイズを驚くスピードで実行し、仮説や解決策を提案してくれます。生産性は劇的に向上し、これは不可逆の流れです。逆らうつもりもありません。

 

だからこそ——

「正しい問いを立てる」「自分の価値観と責任で見極める」「問題解決志向で実行する」。
人間側の“OS”を更新し続けることが、関わる人を幸せにする実装力につながると感じています。

 

 

何も同じことをしてみたらいかがでしょうかというおこがましいことを言うつもりはさらさらありませんが、日々の仕事の中で、これらを意識して活動してみるのはいかがでしょうか。皆さんが書いている企画書を、批判的に自分の目で見直してみる、情報収集にあたりをつけてお尻から考えてみる、会議の中で前に進むよう、やり方を提案してみる。。。ぜひ行動してみてください。

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