「ストーリー」「物語」──
この言葉の大切さを、最近よく耳にするようになった気がします。
ビジョンを語るのもストーリー。
ブランドを語るのもストーリー。
組織への愛着や誇りを語るのも、やはりストーリーです。
この「ストーリー」そのものの力については、また別の機会に考えてみたいと思います。
今日は少し視点を絞って、「問題解決力」という“技”を身につけるうえで欠かせない、ストーリーの考え方について掘り下げてみたいと思います。
■ 問題解決における「ストーリー」とは何か
前回のブログでも触れましたが、内田和成さんはこう述べています。


“仮説思考を使えば、手元にあるわずかな情報だけで、最初にストーリーの全体構成をつくることができる”
『仮説思考』 内田 和成 著
また、安宅和人さんの『イシューからはじめよ』でも、ストーリーの重要性が明確に語られています。

“解の質を高め、生産性を大きく向上させる作業が、『ストーリーライン』づくりと、それに基づく『絵コンテ』づくりだ。
(中略)
これによって最終的に何を生み出すのか、何を伝えることがカギとなるのか、そのためにはどの分析がカギとなるのか、つまりは活動の全体像が明確になる。”
『イシューからはじめよ』 安宅 和人 著
本質的な課題を明らかにし、そこから解決策へ至る全体の流れを先に確認する。
この作業こそが、問題解決における「ストーリー」なのだと理解しています。
■ ストーリーラインと絵コンテ思考
では、実際にどうやってストーリーを描くのか。
内田さんの『仮説思考』には、そのヒントがありました。
“ストーリーのアウトラインを作る場合に、BCGでは「空パック」を使う。30枚くらいのスライドのうち、大半が埋まっていないか、言いたいことや証明したいことは書いてあるが、内容は書かれていないスライドの集まり。この足りないピースを詳細に作り上げていき、全体のストーリーを完結させる。”
『仮説思考』 内田 和成 著
これを知ってから、私は必ず「ストーリーの骨子を先に作るようになりました。ノートに何十個という四角を書き、
「ここでは何を伝えたいのか」
「このチャートがあると自然かもしれない」
そんな下書きを繰り返してから、データ収集や分析、メッセージの磨き込みに入る。下書きしては作り込む……。
今となっては懐かしい作業です。
■ 「違和感」が教えてくれるもの
このやり方を続けていると、不思議なことに、論理の飛躍や不整合があると、感覚的に「違和感」を覚えるようになるのです。
「わかりやすい」ことは、考えていないからではない。
むしろその逆で、深く考えているからこそ、余計なものが削ぎ落とされている。
最近はそんなふうに思っています。
■ 戦略には、必ずストーリーがある
問題解決力は、競争に勝つための「戦略構築力」とも直結します。
この点を明確にしてくれるのが、楠木建先生の言葉です。

“戦略をストーリーとして語るということは、「個別の要素がなぜ齟齬なく連動し、全体としてなぜ事業を駆動するのか」を説明するということです。
それはまた、「なぜその事業が競争の中で他社が達成できない価値を生み出すのか」「なぜ利益をもたらすのか」を説明することでもあります。
個々の打ち手は「静止画」でしかありません。個別の違いが因果論理でつながったとき、戦略は「動画」になります。ストーリーとしての競争戦略は、動画のレベルで他社との違いを作ろうという戦略思考です。”
『ストーリーとしての競争戦略』 楠木 建 著
筋の良い戦略には、必ず因果が連動するストーリーがあります。だからこそ、戦略は「語れる」し、「腹落ち」するのです。
■ AI時代に残る、人間の役割
これからは、問題解決力や戦略構築力といったスキルも、AIが瞬時に提示してくれる時代になります。
そのときに問われるのは、 「これで本当にいいのだろうか?」 「どこかおかしくないだろうか?」
そうした違和感を感じ取るセンスです。
その土台になるのが、『技』としての問題解決力、そしてストーリーを描く力なのだと思います。
■ 基礎の「技」を、いつ身につけるべきか
テクノロジーが進化する時代に、古いやり方に固執する必要はありません。ただ、一度は自分の頭に汗をかくトレーニングが必要だと私は感じています。
できることならそれは、社会に出る前。高校や大学など、時間のあるうちに、「問題解決力」という“技”の基礎を身につけておく。
それが、AIを使いこなし、価値を生み出す大きな土台になる── 今はそんなふうに考えています。
■ だからこそ、問題解決力は「技」として身につける意味がある
これだけテクノロジーが進化している時代に、古くなるかもしれない「考え方」や「型」に時間を使うことは、非効率に見えるかもしれません。
それでも私は、どこかで一度は、
自分の頭でストーリーを描き、違和感にぶつかり、修正する経験
が必要なのだろうと思っています。
その経験がないままAIのアウトプットだけを使ったとき、私たちは本当に「考えている」と言えるのでしょうか。
――あなたが今考えている課題には、ちゃんと一本のストーリーが描けているでしょうか。




