静けさは武器である──問題解決に効く「聞く力」

『技』 - スキルを磨く

前回「問いを立てるとは、好奇心の探求である」という私見を紹介しました。

とはいえ“好奇心”はどちらかと言えば『心』に近い領域です。

今回はもう一度『技』の領域に戻し、

問いをつくる前段階としての「聞く力」

について考えてみたいと思います。

 

 

「聞く」とは、理解するための技術である

以前紹介したケイト・マーフィー『LISTEN』の中に、特に印象的な一節があります。

 

“好奇心旺盛な人は、・・・(中略)・・・人にしっかり耳を傾けます。理解したい、つながりたい、そして成長したいからです。”

『LISTEN』 ケイト・マーフィー 著

 

 

彼女はさらに、“聞けない最大の理由”をこう説明します。

 

 

気が散る最大の原因は、「次にどんな気の利いたことを言おうかな」とか、もし言い争いの場なら「次にどんな破壊力のあることを言ってやろうか」といった、次に何を話そうかと考えることです。”

 

『LISTEN』 ケイト・マーフィー 著

 

 

つまり 「無になる」ことが聞く技術の第一歩 になるわけです。

 

事実だけを拾い、感情や解釈を一度脇に置く。問題解決に必要な“ファクトの抽出”は、ここから始まります。

 

 

聞く力は、問題解決の核心(沈黙の技術)

御厨貴さんの『人を見抜く質問力』にも、聞く力の本質が語られています。

 

「いい質問者」は言うまでもなく、「いい聞き手」である。・・・(中略)・・・なぜならば、しゃべっている内容をきれいに整えてくれ、さらに風通しのよい道へと話をスムーズに先導してくれるからだ。その上、自分の客観的な立ち位置を知らされ、それによって足りないものをどうやって磨いていけばよいのか、といったことまで暗黙のうちに教えてくれたりする。そう考えると、饒舌すぎる現代人というのは「いい質問者」「いい聞き手」が決定的に不足しているからなおさらそうなっているのではないかという気がしてくる。”

 

『人を見抜く「質問力」』 御厨 貴 著

 

 

良い聞き手は、話し手の思考を整え、更に深い場所へ導き、時に相手の客観的位置まで照らしてくれます。

 

そして私が特に好きなのは、この“沈黙の技術”です。

 

 

私は会話や取材の中での無言の間は、一種の神経戦のようなものだと思っている。質問者側がどれだけその沈黙に耐えられたかで、結果の善し悪しが決まる。楽になりたいからといって水面から顔を上げてしまっては負けである。無言の間に耐えられるようにするには、先ほども言ったように常日頃から無言も会話の一つの形態なのだと思うようにすればいい。人間の会話は「無」から「有」を生み出すことだってあるのだ。”

『人を見抜く「質問力」』 御厨 貴 著

 

 

沈黙に耐えた側が、より深い本音に届く。

“聞く”とは、ただ黙ることではなく沈黙に耐える覚悟を持つ技なのだと思います。

 

 

外資カルチャーで育った私が「聞くこと」を失っていた時期

私は長く外資系企業にいました。そこでは「何を話したか」が価値そのものです。

  • 会議で黙るのは怠慢
  • 思考は言語化して示すべき
  • 発言しなければ存在しない

若い頃、上司や同僚から、こんなことをよく言われました。

「お前は今、何を考えているのか言え」

 

その環境のおかげで、“考えを表明する力”は磨かれましたが、同時に相手の話の腰を折る癖も身についてしまいました。

“価値のある発言をしなければ。。。”
“まだ出ていない視点を示さなければ。。。”

 

そんな焦りの中で、実は私は本当の意味で「聞けて」いなかったのです。

 

 

聞くことから、生まれる探求心

年齢を重ねるなかで、「とにかくだまって聞く」ことを意識し始めると、驚くほど相手への興味が湧くようになりました。

  • なぜこの言葉を選んだのか
  • 何がその行動の背景にあるのか
  • どんな前提・感情が隠れているのか

 

茂木健一郎さんは、黙って聞く人をこう肯定しています。

 

“私は、自分と違う意見の話を聞いたときに黙り込んでしまう人を見ると、素直に「いい人だな」と思います。呆然としている、あるいは黙り込んでいるのは、話を聞いて心の中で何かが動いている証拠です。”

 

『最高の結果を引き出す 質問力』 茂木 健一郎 著

 

 

聞く姿勢が、自分目線から相手目線へのシフトを生み、そこから自然に“問い”が生まれる。

 

今振り返ると、
聞く → 興味 → 質問 → 問題の本質
という順番は、極めて自然なのだと思います。

 

 

聞く力は、日常の会話から鍛えられる

聞くことは、特別なスキルではありません。その気になれば、どんな日常でも鍛えられます。

  • 面白いことを言わなくていい
  • うまい返しを狙わなくていい
  • 黙ることで関係性が悪くなることはない

むしろ聞くことで、相手は安心し、話し、深まります。これはもう立派な問題解決の技です

 

 

静けさは、問題解決の“武器”になる

AIが提案をくれる時代にこそ、自分で情報を受け取り、整理し、違和感を拾う力が求められています。

 

その入り口にあるのは――
じっと聞く力

 

今日のまとめは、たったひとつです。

 

聞くときは、耳だけでなく“心のスペース”も開ける

 

ぜひ、明日の会議・1on1・家庭の会話で試してみてください。

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