『創造と変革の志士たちへ』 堀 義人 著

『心』 - 人間性を磨く

前回は、『EQリーダーシップ』をご紹介しました。その要諦はソフトな技である感情的知能=EQが重要であり、優れたリーダーは、感情レベルに訴えかけることにより共鳴を起こし、モチベーションを与え、方向性を示し、ビジョンを実現していくということでした。

ただし、組織を動かすにあたっては、知と情に訴えかけることが大切であることはもちろんですが、当然その基盤となるビジョン、使命、Why、パーパス… こうしたものがなければ、人の心に刺さり、行動を促すことはありません。

 

今日は、そうした心の持ち方、使命感のようなものを強く教えてくれた書籍を紹介したいと思います。

 

堀 義人さんによる、『創造と変革の志士たちへ』がそれです。

堀さんは皆さんがご存じの通り、ビジネススクールであるグロービス経営大学院をたちあげ、多くのビジネスパーソンを輩出してきた方で、この書籍には堀さんのグロービスの立ち上げから運営を通じて蓄積されてきた知見や、次世代を切り開くリーダーに対してのメッセージが多く詰まっています。

 

グロービスでは、『心技体』でいうところの様々な『技』、スキルセットを提供しているわけですが、この堀さんの書籍では、むしろ『心』の持ち方の大切さ、本人の熱い思いが記されています。いくつかご紹介していきたいと思います。

 

志とは、壮大なものでなければならない。
志とは、多くに人に感動を与えなければならない。
志とは、「成し遂げる」ことを事前に意思決定することである。

 

と、どんな『志』を持つべきか、または人を動かす『志』は何なのか、語り掛けます。その上で、

 

「志士」とは、武士道精神にのっとり、高い倫理観と使命感を兼ね備えたリーダーを指す。強い使命感を持ち、「この世に生まれて何をするのか」を考え続け、「お金儲け」のみを目的とせず、自らが社会の創造と変革を担おうとする姿勢を持った人々のことだ

 

と志を有する人間を定義しています。では、「使命」とは何か?

 

好きで、かつ得意なことをやりながら、それが社会にとってどのように役立っているのかを考えると、自らの使命というものが見えてくるものである。
僕の使命感は、「創造と変革の志士」を輩出することにより、社会のダイナミズムを生み出すことである。一方、志は、「アジアナンバー1の大学院を創る」ことである。それを成し遂げることを、事前に意思決定したのである。

 

と自身がグロービスを立ち上げた使命感と志を訴えています。この書籍の中には、次世代リーダーに対して、必要な『技』も紹介しています。

 

リーダーとして成功する要素は、

  1. 知識・フレームワーク
  2. 考える力
  3. 人間関係能力

 

さらに、ソフトスキルである人間関係能力を、

リーダーシップに必要な人間関係能力を分類すると、

  1. 人間力(人間的魅力、人徳、情熱、信念)
  2. 伝える力(コミュニケーション能力、説得力、交渉力)
  3. やる気にさせる力

 

と分類し、経営の現場のリーダーがどのように変革をしていくか、論じています。前回論じたIQの力ではなくまさしく、EQの力も必要であると説いています。そして、森羅万象に興味を持ち、幅広い分野から学ぶことを伝えています。

 

経営面に関して、経営そのものから学べることは、自ずと限界があるのではないかと認識し始めている。すなわち、歴史、心理学、進化論、哲学など様々な分野の読書をすることによって見聞を広め、音楽、芸術、スポーツ、遊びを通して、人間の幅を広げていく。そうした努力が大切ではないかと考えるようになったのだ。

 

その上で、正しい人間性、『心』の持ち方について、多く語られています。

 

志士には、試練を楽しむ姿勢を持ち、気高い生き方をして欲しいと思う。
「試練を楽しむ生き方」とは、試練が成長の機会を与えてくれると喜び、積極的にチャレンジしていく姿勢である。
「気高い生き方」とは、世界観、歴史観、人生観、倫理観、使命感を兼ね備えた生き方である。
リーダーになるのであれば、人間的、道徳的に外れたことをするべきではない。高い水準、高い次元の規範で行動しなくてはならない。人間として範となり、ロールモデルとなるのが、リーダーであり、経営者である。謙虚な気持ちで、言行一致を心がけなければならないのだ。
僕のいう「楽しみ」とは一時的な享楽ではなく、新たに何かを創造する楽しさであったり、学びのプロセスであったり、多くの良い人間と交わりながら自分を向上させる楽しさであったり、精神的にも大きな満足感を得られるものを指す。いわゆる、「自己実現」の欲求である。
名声を求めるために大善をする人が多いが、それよりも身の回りの他人が見ていないところで、コツコツ小さな善行を積んでいく、一歩一歩の積み重ねが、徳をもたらすのである。
小さな信用の積み重ねが、やがて大きな信頼関係となる

 

優れたリーダーであるために、人を導くための人間性の重要さ、精神性を多く説かれています。

 

これこそがまさしく『心技体』が三位一体高いレベルにて昇華することの大切さが説かれていると思いますし、私も多くを学んだフレーズです

 

ここまで『心』の部分についてインスパイアされたフレーズを多くご紹介してきましたが、この書籍の中で私がもっとも好きな言葉は、実はこうした精神性ももちろんですが、次のフレーズなのでした。

 

ビジネスは、社会の問題解決である。

 

自分がやっているビジネスが、誰かの役に立っているのか、社会や人々の解決をしているのか、この言葉に出会ってから、常に考えるようになった大切なワンフレーズで今日は終わりたいと思います。

 

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