不確実な現代にあって、構想力が大切である、という書籍を、紹介してきましたが、私が、『構想力』という言葉を知り、また深く心に刺さったのは、大前研一さんの書籍からです。
大前研一さんは、私がビジネスやリーダーシップについて、多くを学んできた、勝手に私がメンターとしている先生の1人です。『構想力』の重要性については、2001年に発刊された「新・資本論」 (The Invisible Continents)の頃から、”見えない大陸”を見る、という4つの経済空間について論じはじめ、その頃から『構想力』とは呼ばないまでも、新しい社会空間についての観察を理論化されていました。
この『新・経済原論』では、21世紀の国家、地域、企業、個人の在り方について、今まさに進行している事象を論じていて、先見の明にただただ頭が下がるばかりの、重厚な理論書です。ここから、私も多くを学びました。
その巻末、追記にて、『構想力』について、以下のように記されています。
日本語には、「構想力」というとてもよい表現がある。戦略を展開するにはまさにこの構想力が必要なのだ。構想力は「ビジョン」に似てはいるのだが、さらに「コンセプト」や「想像力」といった意味合いも含まれている。しかし、場合によっては白昼夢を想起させる空想とは違い、構想力は目に見えないものを見通し、無定形のものに形を与える能力である。それはまた、必要なビジョンを思いつき、同時に成功するまであきらめないで実行する能力である。それは、これから現れる世界に対する現実的な理解から生まれた想像の産物であり、さらに現実的に言えば、あなたのビジョンを実現する方法がわかっているために、うまく攻略できる事業領域なのだ。
あなたが自分の想像力を駆使して(ただし、構想力に要求される現実的なものであることを忘れずに)ビジョンを実現できたなら、あなたは自分の戦略を打ち出すことができる。こうして戦略を手にしたなら、人財および資本といった資源の配分、それに計画を実施するスケジュールを記述したビジネス・プランを策定することも可能となる。だからこそ、戦略策定の最初の段階で、従来の戦略を考えるテンプレートを使わないことがきわめて重要なのである。自分が戦うであろう事業ドメインの定義と、ドメインをどこまでを、いつまでに占拠するのかについて柔軟に考え、心を開いていく必要がある。この知的プロセスは、従来ビジネススクールが戦略策定手法として教えてきたものとは、明らかに違うものなのだ。
大前先生(あえて、先生と呼ばせていただきます)は、2006年の時点ですでに、『構想力』の重要性、見えないものを見る力とそれを見るようにすることの重要性を、説いていました。少なくとも、私が理解する限りでは、もっともはやくから、このコンセプトについて、説かれています。
その後も、様々な論考で『構想力』の必要性について、他のリーダーからも多く説かれていますが、ますます不確実で、答えのない世界において、この『構想力』が必要になってきている、リーダーの1つの素養になってきている、ということです。
構想力については、他の方たちも色々な考え方や定義を紹介しています。今後紹介していきたいと思います。