もう5月も終わり6月に入ってしまいました。5月はあるプロジェクトに集中していて、こちらの更新もすっかり滞ってしまいました。今回は、約1か月前にご紹介した、『ゾーンに入る』の続きの学びについて、ご紹介していきます。
前回は、オプティマルゾーンとは何ぞや、そしてオプティマルゾーンの状態を得るためには、「最高の気分」が大切であること、「目の前のことに集中する状態を作り出すこと」が大切なことをご紹介しました。
EQとは、自己認識、自己管理、社会認識、社会的交流の4要素をできるだけ客観的に認識することで、感情を適切にコントロールし、適切な人間関係を構築した上で、質の高いパフォーマンスを導き出す感情的な知性です。
入口は自分の感情を正しく認識する、自己認識となるのですが、オプティマルな状態を作り出すための基礎にもなると論じています。

自己認識を「オプティマル」という新しい切り口でとらえると、この能力に通常理解されているよりもずっと大きなメリットがあることがわかる。一般に自己認識は、自分がなぜ、どう感じているのかを知り、その感情が自分の取り組みにどうプラス/マイナスに働いているのかを知る能力と考えられている。そしてこのほかに、自己認識はオプティマルという観点からみて2つの方法で役に立つ。
1つ目として、自己認識は集中を高め、気を散らす誘惑に気づき、背を向けるのを手助けしてくれる。また2つ目のメリットとして、今取り組んでいる課題でオプティマルゾーンの感情が得られるかどうかを知らせる、体のかすかな感覚に気づくことができる。
その上で、自己管理がきわめて重要になってくる。

“自分の意図した時に、意図した先へ注意を向ける能力は、それと密接に関係する「認知制御」という知的能力の上に成り立っている。私たちは認知制御のおかげで、特定の課題に集中し、気をちらす誘惑(とくに強い感情を呼び覚ますもの)を無視することができる。“
“心理学者の言う「認知制御」には、さまざまな自己管理能力が含まれる。たとえば初期衝動を抑え、とっさに頭に浮かぶことではなく、最も合理的なことを行う能力や、繰り返し頭に浮かぶネガティブな思考(集中の最も厄介な敵)を鎮める能力もそうだ。”
“自己制御という重要なこの能力は、感情バランスを保つ、目標達成のために努力する、変化に柔軟に対応する、プラス思考を保つといった、「自己管理」領域にあらゆるEQ能力の根幹をなしている。認知制御に欠けると、こうした能力が阻害される。ひとことで言えば、自己管理は認知制御の上に成り立っているのだ。”
“認知制御は、自分の意図した対象への集中を保ち、オプティマルゾーンにとどまるための基本能力というだけでなく、あらゆる自己制御の根幹となる能力である。“
“ビジネスやスポーツ、芸術など、どんな分野でも、一点集中は素晴らしいパフォーマンスを手助けする。こうしたオプティマルゾーンに入ることを促すカギの1つが、感情バランスを保ち、困難にあっても折れずにいる力、すなわち「感情の自己コントロール」である。“
メンタルのコントロール、当たり前ですが、集中力を高めるために必須であると。でも、当たり前といえば当たり前の理論なのですが、学問的にもこのようなことが再認識されたということです。
でももっと大切なのは、どうやって認知制御ができるようになるかではないでしょうか。

ストレス下にあっても感情過剰バランスを保つ方法はいろいろある。
- 目的意識を持つ。
- 手元の課題に集中する。
- 仕事と家庭のバランスをとる
- 変えられることを変える。
- 主導権を取り戻す。
- 休みを取る。
- 深呼吸する。
- 感謝の気持ちを持つ。
そんなに特別なことではないですし、いろいろなところで言われてもいることです。要は、自分自身の感情を知り、上手にコントロールすことが大切であることを知る、のが大切だと言えそうですね。
その上で社会認識、対人との関係構築、共感となるわけです。共感のカギとなるポイントをいかに記しています。

共感には3種類あり、それぞれを異なる脳回路が担当する。
“「認知的共感」は、他者の思考や言葉遣い、視点を理解する能力を言う。この力があれば、相手に最も伝わりやすい方法でコミュニケーションを図ることができる。”
“「感情的共感」は、他者の感情を読み取る能力をいう。この力があれば、相手の心に響くメッセージを届けられる。”
“「共感的配慮」は、他者を気遣う能力を言う。この力は、相手の信頼と敬意を勝ち取り、関係を深める助けになる。”
“「組織感覚力」は、共感の対象を広げて、社会的知性を発揮し、家族であれ職場であれ、さまざまな集団の根底にある人間関係や影響力のネットワークを読み取る能力である。”
少し理論過剰で、では我々はどうすればそれを開発できるのか、という部分は少し薄い感じがしてきました。
しかし一方で、おもしろい知見もあります。個人ではなく、組織のEQです。

個人のEQを高めるためには、何カ月もの持続的な訓練と練習が欠かせない。だがチームのEQはたった一度の会議をきっかけに、目に見えて高まることがある。メンバーの関わり方に関する認識を共有し、かかわりあい方に関する規範を定めるだけでいいのだ。もちろん、一度の会議でいきなり変わるわけではない。問題意識を持ち続け、継続的に振り返り、実践を繰り返す必要がある。また、感情コントロールや対人能力で手助けを必要とするメンバーもいるだろう。だがチームに焦点をあてることで、変革のプロセスをよりすばやく、より強力なものにできるのだ。

チームの成功に最も重要な要因は、「誰がチームにいるか」ではなく、「メンバーがどう協力しているか」だった。なかでも「群を抜いて」重要な要因は、心理的安全性だった。

心理的安全性が高いチームは、恥ずかしい思いをしたり罰を受けたりすることはないという自信をもって、自分の間違いを認め、質問をし、新しいアイデアを提案することができる。それに、提案された多様なアイデアをうまく活用することができる。

またこの研究では、集団としての有能さを予測する別の因子である「明瞭さ」も、心理的安全性との関連が示唆された。「何がチームに求められているか」「チームの目標は何か」といったことがはっきりわからないと、安心できないからだ。
これは興味深いです。チームの「関係の質」が、より高いパフォーマンスを導く可能性があると。
それも結局リーダーがどのようにメンバーを導くかなのでしょうが、示唆のある見地だと思いました。