前回は、創造力の源泉としての“組み合わせる力”について書きました。
異なる特性を持つ人たちを集め、プロデューサーが束ねることで、多様な解が生まれる。
そんな話でした。
ただ、私はそこでひとつ大きな壁にぶつかりました。
「人の力をまとめる前に、自分の“創造の引き出し”が薄いのではないか?」
これがずっと心の奥で引っかかっていたのです。
■ 私の苦手意識——“右脳が弱いリーダー”という現実
皆さん既にお気づきと思いますが、私は右脳的な思考が圧倒的に苦手です。
絵のセンスは壊滅的。
空間認知も弱い。
アイデア出しと聞くと、身体が硬直し、左脳を無理やり回転させて“論理でひねり出そう”とする。
創造しようとすると、逆に固くなるタイプ。
これが長年のコンプレックスでした。
だからこそ、プロデューサーのように「人の異質を掛け算する役割」を演じようとすると、必ずこう思ってしまう。
「そもそも、自分のアイデアの“種”が少ないのでは?」
この苦手意識は、もっと表に出すべきだと今回思いました。むしろ、ここが今回のお話の出発点だからです。
■ 量を出すことで、苦手意識が少しずつ溶け始めた
そこで出会ったのが、マンダラートでした。
大谷翔平選手が使って一気に有名になったあのツールです。
『考具』にもあるように、


“創造の入口は「質」ではなく「量」である。”
『考具』 加藤 昌治 著
最初はピンと来ませんでしたが、実際にやってみると、
“とにかく出してみる”という行為が、固くなった頭を少しだけゆるめてくれました。
ただ、それでもまだ「創造している」という感覚は弱かった。
何かが足りない——そう感じていました。
■ 私の創造の原点は、サウナにあった
ここで、話が少し変わります。
私は30年来のサウナーです。
サウナ → 水風呂 → 外気浴。
あの“ととのった瞬間”、世界が静かになり、意識の輪郭がぼやけるあの状態。
そのときでした。
頭の中で、別々に存在していた情報が勝手につながり始めたのを認識したときがあったのです。
粒々に存在している点が、つながって、新しい形になり、新しいアイデアとして浮かび上がる—— 単体の原子がくっついて分子になるような感じでしょうか。
あの感覚は、私にとっての“創造の瞬間”でした。
「創造力とは、“考える”のではなく、“結ばれる”瞬間なのだ。」
この気づきが、私の創造観を変えました。
■ リラックスとインプットの“掛け算”が、ひらめきを生む
茂木健一郎さんはこう言います。


“ひらめきやすい環境というのは、外部からどういったインスピレーションが与えられるかではなく、いかに自分の脳がリラックスできるかということが大事なのです。”
『ひらめき脳』 茂木 健一郎 著
“ひらめくためには、脳がリラックスしていることが大事”
勝間和代さんもこのように書いています。

“1つの課題を考えて、考えて、考え抜くと、ふとリラックスしたときに、頭の中でアイデアが結実する。”
『ビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』 勝間 和代 著
“考え抜いたあと、ふと緩んだ瞬間にアイデアは結実する。” 私はこれに深く共感します。
インプットの量 × 考え抜く × 緩む
この三つが揃ったとき、
創造は“起こす”ものから“起きる”ものに変わる。
そして気づきました。
「創造力は努力では磨けないが、環境なら整えられる。」
これは、右脳が苦手な私にとって救いでした。
■ AIが与えるのは、“越境”という創造のチャンス
今の時代、AIとのブレストをしない人はいないでしょう。
城田真琴さんはこう述べています。

“イノベーションの多くは、一つの専門分野を深く掘り下げる「深化」の過程からではなく、異なる分野の知見が予期せず結びつく「探索」の過程から生まれることが知られています。AIエージェントは、この「越境」を強力にサポートするツールとなります。なぜなら、私たちはもはや、すべての分野の専門家になる必要がなくなるからです。自分の専門外の領域については、その分野の専門AIエージェントに聞けばいい。重要なのは、自分の専門領域の「核」となる知見を持ちつつ、他の領域に対して常にアンテナを張り、それらを結び付けて新しい問いや仮説を生み出す能力です。”
『AIエージェント』 城田 真琴 著
“イノベーションは“探索”。AIは異分野の探索を加速させる。“
AIは、自分では思いつかない角度、普段触れない領域、異質な視点を与えてくれます。
ただし——
AIだけでは“らしさ”が出ません。
だからこそ、
自分の核(価値観・経験)と掛け算する必要がある。
右脳が苦手でも大丈夫です。
AIが“右脳の補助脳”になってくれる時代だからです。
■ 創造力はひとりでは生まれない
環境を整え、AIを使い、インプットを増やす。
最後に必要なのは、人との対話でした。
“普段の何気ない会話も、「ひらめき」にとって非常に重要な要素です。”
“一番の楽しみは、他人とのコミュニケーションを充実させることで、自分の脳の中のコミュニケーション(異なる領域の掛け算!)も豊かにすることができるということではないでしょうか。”
『ひらめき脳』 茂木 健一郎 著
ランチの雑談、短い立ち話、何気ない会話——
こうした“生の揺らぎ”こそ、AIには再現できない刺激です。
他者の声を聞くことで、自分の中の情報同士がぶつかり、新しい結合が起きる。
創造とは、知識の量ではなく“結び方のセンス”である。
私が長年苦手だった創造力は、実は“右脳力”ではなく、「異質とつながる力」だったのかもしれません。
そして最後に気づいたのは、ひらめきも創造も、結局は“人とのつながり”の中で育つということでした。リーダーシップのOSである技を鍛えるためにも、ツールや理論だけでなく、「ヒューマン」な側面も、このAI時代だからこそ、もっと大切になってきているのかなと思います。



